第3回学術講演会抄録集

(印刷版1997年8月発行)

 

目次

コミュニケーションをめぐって

7/25(木)
AM 10:30 家庭療育・<通園版>の展開
知的障害に難聴等を伴う重複障害児の言語訓練
−家庭療育を中心に−

和泉千寿世(横浜市総合リハビリテーションセンター)

通園施設における個別言語訓練とクラス指導 通園施設における個別言語訓練とクラス指導
−自閉症児に<S−S法>とTEACCHプログラムを応用して−

藤岡紀子(今治福祉施設協会 ひよこ園)

PM 12:50 「質問−応答関係検査」セミナー
「質問−応答関係検査」講習
講習1 実施手順

東江浩美(越ヶ谷市言語室)

講習2 類型的特徴と年齢群別特徴

知念洋美(千葉リハビリテーションセンター)

講習3 まとめ

佐竹恒夫(横浜市総合リハビリテーションセンター)

その展開
II群(コミュニケーション態度不良)におけるコミュニケーション行動の形成・促進
−段階4(2〜3語連鎖),段階5(統語方略)の質問−応答の訓練−

倉井成子(国立身体障害者リハビリテーションセンター・病院)

初期の質問−応答関係
−正常2〜3歳児における身体部位,動作に関するナゾナゾ遊び−

中野真理子(浦和市立教育研究所)

初期の質問−応答関係の学習
−言語発達遅滞児における身体部位,動作に関するナゾナゾ遊びを中心とする訓練−

小寺富子(国立身体障害者リハビリテーションセンター・病院)

PM 16:30  講演
臨床と情報
−インターネットを活用した臨床的コミュニケーション−

佐竹恒夫(横浜市総合リハビリテーションセンター)

 
7/26(金)
AM 10:00 ワークショップ AAC(補助・代替コミュニケーション)

コーディネーター:林耕司(長野赤十字病院)

補助・代替コミュニケーション手段(AAC)の活用をめぐって

野沢由紀子(信濃医療福祉センター)
林耕司(長野赤十字病院)

重度脳性マヒ児のコミュニケーションの拡大

岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)

気管切開を伴う重複障害児におけるAAC(補助・代替コミュニケーション)

知念洋美(千葉リハビリテーションセンター)

AM
11:50

昼休
重症心身障害児・者の代替コミュニケーション手段の工夫について

高泉嘉昭(東京小児療育病院)

PM
13:55
コミュニケーションのフレームワーク
1自閉症児へのコミュニケーション訓練の試み
−機能と話題・動的コミュニケーション−

原広美(横浜市戸塚地域療育センター)

コミュニケーション評価・訓練のフレームワーク

佐竹恒夫(横浜市総合リハビリテーションセンター)

PM
15:25
パネルディスカッション

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知的障害に難聴等を伴う重複障害児の言語訓練
−家庭療育を中心に

和泉千寿世(横浜市総合リハビリテーションセンター)

[はじめに]
難聴と知的障害、運動発達遅滞をなどを伴う、音声記号未習得児に<S−S法>に基づく言語訓練プログラムと、補聴器の装用指導、コミュニケーション指導を含めた家庭療育へのアプローチを中心に2週に1回の頻度で1年半訓練を行い改善がみられた。今回は、家庭療育に関するプログラムを中心に報告する。

[症例]
199*年生まれ。医学的診断名:精神発達遅滞。合併症:高度感音性難聴、視力障害(虹彩部分欠損)。現在当センタ−肢体不自由児通園施設に在園。1歳11カ月から他の通園施設に通園しST訓練を受けていたが、父親の転勤に伴い当センターに来所。初診時(3歳6カ月)の症状分類は・群(コミュニケーション関係良好)で、記号形式−指示内容関係は段階2−2(ふるいわけ)〜2−3(選択)であった。補聴器は購入していたが装用はできていなかった。

[結果および考察]
・4歳9カ月の段階は段階3−2(音声記号)で、音声記号の受信が可能となり、音声記号の発信は数語可能となった。音声記号の受信および発信が可能になる過程で身振り記号が媒介となった。

・補聴器は初診時から1カ月半で両耳常時装用可能となり音への反応に変化が見られた。補聴器の常時装用が可能になるには正確な聴力の検査と補聴器のフィッティングが重要であった。

・家庭療育は養育内容、コミュニケーションの取り方、障害の認識の形成をポイントに援助を行った。その結果,母親の養育態度,本児とのコミュニケーションのとり方に改善がみられた。

・養育内容については家庭療育プログラムをもとに両親の養育への意識評価し、チェックリストを用いて母親への援助を行った。

・コミュニケーションについてはVTRを用いて子どもへの接し方を助言し、チェックリストを用いて母親が自分のかかわり方を自己評価する方法を取り入れた。

・障害認識の形成については他職種と連携して行った。

母親への援助は母親の力量を評価し具体的なプログラムを示していく必要があった。母親の養育能力は高かったが障害の認識、養育の視点は薄かった。


通園施設における個別言語訓練とクラス指導
−自閉症児に<S−S法>とTEACCHプログラムを応用して

藤岡 紀子(今治福祉施設協会 ひよこ園)

 当園では<S−S法>の考え方が職員間に浸透し,クラス指導にも生かされているが,これと並行して平成4年度より,自閉症及び近縁のコミュニケーション障害児に対しTEACCHプログラムを応用したクラス指導を開始した。

 TEACCHプログラムで用いられる「環境の構造化」は,「受信」を助ける文脈作りと考えられる。実際,環境の構造化を行うことで,彼らに言語指示が入りやすくなったが,彼らの側からの「発信」については,従来通りの指導を行っていた。

 その後,TEACCHプログラムの表現性コミュニケーション指導の中に,写真や絵カードを呈示して自分の意志を伝える方法があることを知り,身ぶり記号の発信を指導してもその機能的使用がなかなか拡大しない音声発信困難傾向の自閉症児に対し,その方法を導入したところ,それらを活発に使用するようになり,更に自作の身振りも使用し始め,それに伴って顕著だった問題行動面にも改善の兆しが見られるようになった。卒園後1年たった現在では,身振りを連鎖発信させて簡単なやりとりをすることができるようになっている。

 このような方法は,本児のみならず,ようやく二つ以上の物に対して弁別的な操作,行動が取れ始めた段階の自閉症児にも十分応用できることがわかった。

 即ち,写真や絵等の視覚的記号は,身振りや音声等の言語記号の受発信を習得する以前の段階から伝達手段として使用可能であり,またそれを伝達場面で使えるようにしておくことは,習得した言語記号の機能的使用を促進する方向にも作用すると考えられる。


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「質問−応答関係検査」セミナー 講習

 このセミナーでは,言語発達遅滞児の会話能力を評価するために作成した「質問−応答関係検査」について講習を行う。「質問−応答関係検査」は1990 年に原案を作成し,1 990〜1991年にかけてノーマルデータを収集し,その後結果の分析と統計処理を行い, 1994年に音声言語医学誌上で発表した。

 本検査には以下のような特徴がある。
(a) 2歳台から就学前までのレベルの幼児を対象とし,一貫した評価が可能である。
(b) 検査結果をノーマルデータと対照できる。
(c) 所要時間は短く,臨床場面で他の言語発達検査と併用して実施できる。
(d) 子供の正答や誤答を質的に分析し,発達的な評価ができる。
(e)検査結果を言語発達遅滞児への訓練プログラム立案に活用できる。

 「講習1」では,具体的な実施手順について解説し,「講習2」では結果の解釈について「類型的特徴と年齢群別特徴」を中心に説明する。さらに「講習3」では幼児期の会話の発達について見通しを得るため,仮説的な段階設定を提示しまとめる。

文献

  • 1994 質問−応答関係検査1 検査の作成とノーマルデータ 外山浩美 ,久野雅樹,知念洋美,佐竹恒夫 音声言語医学Vol.35,NO.4,338-348
  • 1994 質問−応答関係検査2 質的分析と会話能力の段階設定 佐竹恒夫,外山 浩美,知念洋美,久野雅樹 音声言語医学Vol.35,NO.4,349-358
  • 1994 言語発達遅滞訓練マニュアル<2> 第4章 質問−応答関係 佐竹恒夫 言語発達遅滞研究会 /エスコアール

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「質問−応答関係検査」セミナー その展開

II群(コミュニケーション態度不良)におけるコミュニケーション行動の形成・促進−段階4(2〜3語連鎖),段階5(統語方略)の質問−応答の訓練

倉井成子 (国立身体障害者リハビリテーションセンター・病院)

 言語を獲得しているが,対人・対物関係に偏りのある,<S−S法>でII群と分類されるような子ども達について,「ことばを話すようになったが,会話ができない」と親は訴えることが多い。会話は少人数の間での種々の情報交換だが,円滑に行くにはそこで用いられる記号形式−指示内容関係の理解の他に,コミュニケーション機能の分化,さらには自然なプロソディー,非言語的要素(表情など)の獲得が要求される。・群の子ども達においては記号形式−指示内容関係の段階は発達して行くが,コミュニケーション機能の分化は困難であり,プロソディーや非言語的要素の獲得にいたっては不可能に近いと思われることがしばしばである。

 特に・群の子どもにおけるコミュニケーションの促進は<S−S法>によるアプローチの中でも大きな課題であり,何をどのように取上げるかは,現在模索中である(原,東川,佐竹1995,音声言語医学会発表)。質問−応答は,困難な中でも比較的取組み易い内容を有するコミュニケーション機能の1つである。著者は第2回言語発達遅滞研究会学術講演会,及び言語発達遅滞研究第2号で,II群の1症例の質問−応答関係の成立について若干ふれたが,今回は症例数を増やし訓練を試みた。

対象:・群 記号形式−指示内容関係段階3〜5,質問−応答関係検査得点0または名前が答えられる程度の症例6名。

方法:・通常の訓練課題の一つとして,定型的質問に応答することを促す。・段階4以上の子どものおいては,1セッションの中で,必要な場面で質問の発信を促す。・は,名前,年令,同伴者,乗物については全ての子どもにたずね,答えるという課題である。

 本学術講演会ではその経過を報告し,検討を加える。

初期の質問−応答関係の発達
−正常2〜3歳児における身体部位,動作に関するナゾナゾ遊び

奥野真理子(浦和市立教育研究所)
小寺富子(国立身体障害者リハビリテーションセンター)
佐々木千穂(三井大牟田病院)
大貫典子(慶應義塾大学病院)
猪狩清乃(前八千代市ことばと発達の相談室)
中本文子(埼玉医科大学病院)

 はじめに:健常児の質問−応答関係の成立を調査し,言語発達遅滞児の評価・訓練プログラム形成の基礎資料を得たい。

目的:身体部位と動作に関する2種のなぞなぞ遊び(例:「足に履くものは何?」「紙を切る時に使うものは何?」)について,・何歳から可能か,・正答を得られなかった場合に,何らかの手続き(=“訓練”)を経ることにより,正答に近づけるか,・身体部位と動作,語彙項目間に差があるか,などを知る。
   
対象:2歳5ヶ月〜3歳9ヶ月の普通保育園在園児29名(男19名女10名,平均月齢38.7ヶ月)

方法:なぞなぞ遊びとして,身体部位に関する語(靴下・帽子・眼鏡・手袋)と,動作に関する語(鋏・椅子・石鹸・布団)を答える質問を与える。口頭で答えること(自発応答)が困難な時は,2個の選択肢(例:「靴下かな手袋かな?」)を与える(二択)。さらに困難であれば,特定の材料(例:足と靴下の絵,鋏の絵)を用いて“訓練”する。

結果:・“なぞなぞ遊び”は2歳後半で,二択も含めると6人中5人の子供が1語以上応じることができた。

・“訓練”により,2歳後半では6人中4人の得点が上昇し,3歳では100%の子供の得点が上昇した。また,“訓練”により3歳は4語とも正答の,いわゆる満点に達した子が多いが,2歳後半では満点に到達した子は6人中1人であった。

・身体部位と動作の成績を比べると,3歳では身体部位の方が幾分良好であった。語彙項目間の成績は,身体部位に関する語では帽子,動作に関する語では椅子
の正答率が高かった。

 本調査により,この年令の保育園児は,コミュニケーション関係の維持,発話意図の了解,質問に対する何らかの応答が可能であることがわかった。


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初期の質問−応答関係の学習
−言語発達遅滞児における身体部位,動作に関するナゾナゾ遊びを中心とする訓練

小寺富子(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

 はじめに:言語をある程度獲得した言語発達遅滞児にとって、目の前に絵や実物などの材料のない状態で、ことばだけで他者とやりとりすることは困難なことが多い。しかし、言語が役立つことの一つは、非現前の物事についての情報提供である。そのような、音声−音声のコミュニケーションを可能にするような言語訓練プログラムの形成が、従来の記号形式−指示内容関係に関するプログラムの確立と共に、必要であろう。

 目的:身体部位と動作に関するなぞなぞ遊び(例「頭にかぶるものは何?」「座る時使うものは何?」)で、・どのような条件(言語理解、コミュニケーション態度、年齢他)の言語発達遅滞児に応答が可能か、・どのような訓練手続きで応答や質問を発することが可能になるか、を知る。

 対象:3〜18才の言語発達遅滞児45名。

 方法:身体部位、動作とも各4語を答えさせる質問を与え、困難な時は特定の材料(例.頭と帽子、椅子の絵)を用いて”訓練”する(正常児の調査と同じ)。継続訓練中の症例には、個別の訓練プログラムを実施する。

 結果:・なぞなぞ遊びの成績(応答)は、主に言語理解とコミュニケーション態度に左右された;イ理解が2語連鎖では全般に困難だった、ロコミュ良好群では3語連鎖以上になると、よくできるか、訓練により可能になった、ハコミュ不良群は語順でもまったく困難な場合があるが長期の訓練により可能になった。・正常児と同様な”訓練”で応答が改善した症例が2名いたが、多くはより綿密なプログラムを長期に行うことが必要だった。質問を発することは全般に困難だった。

 音声−音声のやりとりの前に、絵−絵、音声(文字)−絵、文字−文字など、テーマを明確に示す材料を用いて語と語の関係を把握させるプログラムが重要と思われた。


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臨床と情報−インターネットを活用した臨床的コミュニケーション

佐竹恒夫(横浜市総合リハビリテーションセンター)

 この1年インターネットの話題がマスコミに登場しない日はない。しかし実際に私達が日頃行っている言語発達遅滞児への臨床活動にどのように関連し役立つか,という観点からインターネットを紹介する情報は少ない。そこでこの講演では1言語療法士が臨床を行いながら必要な情報の受・発信にどのようにインターネット(パソコン通信を含む)を活用しているか,具体例をあげながら述べる。主な話題は以下の通りである。

  1. 臨床情報の発信 電子メイル 言語発達遅滞研究会HomePage 紹介
  2. 臨床情報の受信と探索 AAC(補助代替コミュニケーション)関連  機器情報  文献探索
  3. 臨床情報の交流 言発研メイリングリスト 

 私自身パソコン通信を含めたインターネットのシステムやデータベース等に精通しているわけではないが,この講演によりこれからインターネットを始めようと考えている方がインターネットを利用し臨床的なコミュニケーションが活発になるきっかけとなれば幸いである。


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ワークショップ AAC(補助・代替コミュニケーション)

コーディネーター:林耕司(長野赤十字病院)

補助・代替コミュニケーション手段(AAC)の活用をめぐって

林耕司(長野赤十字病院)

 林らは1986年に図形シンボルシステムNSL86を開発し、以来10年間図形シンボルを様々な精神発達遅滞児者らに適用し、AACの問題を考えてきた。最近、学会などでもようやく演題名にAACを冠した発表がなされるようになり少しずつAACへの関心も高まりつつあるようである。しかし、AACの考え方が日本に定着していくにあたっては、まず日本より数段先を歩いているアメリカなどのAAC先進国のAAC研究が吟味され日本の臨床家に紹介されていく必要があるだろう。

 AACはアメリカでは次のように定義されている。「AAC(補助代替コミュニケーション)とは、表出面に重度のコミュニケーション障害を持っている人々のimpairmentやdisabilityを補償する臨床活動の領域である」(ASHA,1989)。また、AAC手段を用いた言語訓練とは単一のコミュニケーション手段だけを与えて訓練を押し進めることではないということにも注意を向ける必要があるだろう。「AACでは、残存スピーチや発声を含めてジェスチャー、サイン、コミュニケーション機器などのエイドといった様々な手段を用いて個々人のコミュニケーション能力を最大限に利用する」(ASHA,1991)。

 様々なコミュニケーション手段を用いて障害を補償し、障害を解消しようとする発想は大変に魅力的であるし、人と人とのコミュニケーションがことばだけでなく表情や視線、身振り、姿勢などをも使って成りたっていることを考えるとまことに合理的な考えといえるだろう。しかし、いざAAC手段を用いて言語訓練を始めてみると様々な壁にぶつかることになる。このワークショップではその様々な壁(たとえば、シンボルや語彙をどうするか、コミュニケーション機器やスイッチをどうするか、コミュニケーションパートナーにどうアプローチするかなど)にどう対処していくべきかを各演者と共に考えてみたい。

 「僕はハイテクのファンじゃない。障害が重ければ重いほど習得に多大な労力を払わねばならないが利益は少ない。機器から受ける恩恵が努力に見合うと確信するまではハイテクを使うなんて嫌だ。」(McDonald,1988)。

 「僕は書いた。目の前の床に"A"を。見上げると母の頬に涙が伝っていた。やったんだ。それからだ,自分の表現が始まったのは。左の足指ではさんだ黄色いチョークで書いたそのたった一文字が新しい世界へのそして自由な世界への鍵だった。」(Brown,1954)。

 「技術の進歩はことばのない人々の生活に夜明けをもたらした。しかし、何千もの障害者がこの技術の恩恵を受けぬままひっそりと孤立して生活している。技術と有能な専門家に出会える機会を持っていない人がいかに多いことか。」(Viggiano,1981)。


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補助代替コミュニケーション手段の活用をめぐって−AACの発展と今後の方向性−

野沢由紀子(信濃医療福祉センター)
林 耕司(長野赤十字病院)

 補助代替コミュニケーション(Augmentative and Alternative Communication−以下、AAC−)に関する研究、臨床の歴史は浅く、20世紀の後半にようやく活発化したにすぎないが、わずか40年の間に、大きな発展を遂げた。特にこの間のハイテク技術のめざましい進歩による影響は大きく、運動・認知機能に重度の障害を持つ人々にまで、その対象が拡大した。さらに近年、環境との相互作用に基づく力動的システムというコミュニケーションの本質からみて、単に手段を提供するだけではなく、ユーザーが能動的に相互作用に参加するための条件を包括的に調整していこうとするアプローチが重視されるようになっている。中でも、Beukleman and Mirenda(1992)によるthe Participation Model(参加モデル)は、コミュニケーションの相互作用に参加する際の障害を、Opportunity Barriers(ユーザーをとりまく社会的環境の問題)とAccess Barriers(ユーザー個人およびその直接的サポートシステムの問題)とを大別し、この2つの柱を基に、現在および将来にわたるAACアプローチのあり方をシステマティックにとらえており、意義深い。特に、Opportunity Barriersについては、われわれの日頃の臨床をかえりみても反省すべき点が多く、今後の重要な課題となる部分であろう。

 今回、われわれは、AACの発展過程をふりかえるとともに、今後の方向性についてもthe Participation Modelを中心に症例を含めながら考察したので報告したい。

引用文献;Beukelman,D.,Mirenda,P.:Augmentative and alternative communication:Management of severe communication disorders in children and adults. Paul H. Brooks, Baltimore,1992.

重度脳性麻痺児のコミュニケーションの拡大

岩根 章夫(姫路市総合福祉通園センター)

【はじめに】 
 脳性麻痺のため重度の運動障害を有し、発声・発語のみでなく、身振りや指差し、事物の呈示など前言語的コミュニケーションを成立するために必要な身体機能にも障害をもつ症例に対して、可能な運動能力や代用コミュニケーション手段を用いながら発信行動の拡大を行ったので報告する。

【症例】
 199*年生れ。医学的診断名:脳性麻痺。合併症にてんかん、交代性外斜視、近視性乱視がある。生育歴:在胎2*週、1***gで出生。1*カ月時当センターを受診、機能訓練を開始。「好きなものの名前を聞くと喜ぶ」など、音声記号の理解もある程度はあると思われたが、具体的な表出手段がなく、3歳*カ月より代用手段を考慮したアプローチを開始した。

【経過】
第1期:呈示物や指差しの方向をみるなどの視覚的共同注意を促しながら、視線でのコミュニケーション(eye gaze)を導入した。

第2期:絵カードやシンボル(PCS)などの理解をすすめるとともに、eye gazeを日常生活の中でコミュニケーションへと拡大した。また、/はい、あかん/の有意味語の出現とともにYes-No応答を確実なものとした。

第3期:不明瞭ながら数語の有意味語も出現したが、受け身的なコミュニケーション状況は続いた。音声出力装置VOCA(ビッグマック/Able Net)をコミュニケーションの開始時の注意喚起機能として用い、自発的なコミュニケーションの開始を促した。

 これらの結果から、重度の運動障害を有する症例の発信行動の拡大において、eye gazeやVOCAの果たした役割について考察する。


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気管切開を伴う重複障害児のAAC(補助・代替コミュニケーション)

知念洋美(千葉リハビリテーションセンター)

 AAC(Augmentative and Alter native Communication)とは,ASHAの定義によるとコミュニケーションの表現面の重度の障害(すなわちspeech-languageや書字の重度の障害)をもったケースの障害パターンを暫定的に,あるいは恒久的に補償しようとする臨床的な実践の領域である(試訳)。今回,気管切開を伴う重複障害児に対し包括的な言語訓練を行い,様々なコミュニケーション手段を経て数語の音声発信と実用的な文字発信を獲得した経過について述べる。

 症例は198*年生まれ。障害名は多発奇形,小顎症と舌後退による呼吸障害のため気管切開,脳神経麻痺,肺性心,身体発育障害,精神発達遅滞。6歳 *か月(以下6:*と略す)に当センターに単独入園,肢体不自由児養護学校に入学。6:*時の新版K式発達検査は(掲載者略)。6:*時の言語評価はI 〜II群(コミュニケーション態度 良好〜ボーダー),受信面は段階 3-2(音声記号),発信面は音声,身振り発信なし。ポインティングで要求。イエス・ノー表現は曖昧だが,拒否ははっきり首を横に振る。

 本児の6年間の発信面の訓練経過を発信行動習得モデルにまとめ,音声発信を補助・代替した各記号の関連性について考察する。また本児の使用したコミュニケーションツール−−コミュニケーションボード,コミュニケーションブック,チャイム,おしゃべりくんハイ!((有)アルファシステム),50音表,トーキングエイドα((株)ナムコ)など−−についても紹介する。

 文献 American Speech-Language-Hearing Association : Competencies for speech-language pathologists provideing services in augmentative communication. ASHA ,31:107-110, 1 989. 知念洋美,佐竹恒夫:知的障害を有する1脳性麻痺児の発信行動の習得過程について.音声言語医学,投稿中.


重症心身障害児・者の代替コミュニケーション手段の工夫について

高泉嘉昭 (東京小児療育病院)

 重症心身障害児施設の利用児者の中には,相当の言語理解力を有しながら,重篤な発声発語器官の運動機能障害等から,日常のコミュニケーションが受け身的になっている人達がいる。そこで彼等がより自発的に意志表出できる方法がないものかどうか検討・工夫し,以下のような指導を行った。

[対象児者]みどり愛育園利用児者のうち重度脳性麻痺(CP)1名,CP+合併症7名,他1名。指導開始時平均年齢17歳4ヶ月。1名を除き寝たきり。随意性の高い部位は,発声のみ1名,上肢4名,下肢2名,舌2名。表出面ではほとんどが発声や緊張で訴え,問いかけには発声や緊張,表情,舌によるイエス,ノー応答で答えることが主であった。受容面は具体物の名称理解のレベルから通常会話・文字理解までと比較的幅が広かった。

[方法]個々の言語能力,身体部位の随意能力,記号の習得状況等を評価し,コミュニケーションボード,スイッチ,チャイム,パソコン等の機器を導入しそれぞれの症状にみあった代替コミュニケーション手段の導入・指導を行った。

[結果]特に表出面で,ほとんどが応答のレベルから自発的要求,伝達,質問のレベルへ移行し,中には自動的環境制御装置の導入が可能になった人もいた。その結果,生活全般に活性化がみられ,職員側にも待って受けとめる対応や,機器に対する様々な認識が生まれてきた。

 以上のことから,当日は数名についてはビデオで紹介し,代替的コミュニケーション手段の成立の条件,意義,検討課題,代替的コミュニケーション手段の工夫・開発・導入を育んでいくための特に施設における環境づくりについて参考意見を述べたい。


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1自閉症児へのコミュニケーション訓練−機能と話題・動的コミュニケーション評価の試み−

原 広美(横浜市地域療育センター)

<はじめに>言語発達遅滞児のコミュニケーション行動を包括的に捉えるためには,(1)動的コミュニケーション(相手への注目や伝達の確認など),(2)コミュニケーション機能,(3)話題=Subject Matter(コミュニケーションの内容),の3つの側面より検討することが必要である。本報告では1自閉症児に対して2年間の言語訓練を行った結果についてこの3つの側面より分析する。

<症例>5歳。自閉症,軽度精神遅滞。言語訓練開始時(5歳9ヶ月)の言語評価は国リハ式<S−S法>言語発達遅滞検査他で受信面は3歳半レベル(統語方略の語順可,PVTの語彙年齢3:8),発信面では多語発話が可能だった。質問への応答はほとんどエコラリアになる。コミュニケーション機能は要求が主で報告が萌芽的にみられた。話題は食べ物についてが中心で現前事象についての発話がほとんどであった。こだわりや行動異常が強かった。

<分析の方法>
(1)動的コミュニケーション 佐竹,宇都宮らの開発したコミュニケーションチェックリスト*を用いて受信時,発信時の動的コミュニケーションをスクリプト分析する。

(2)コミュニケーション機能 コミュニケーション機能を要求,報告,対人の大きく3つに分類し,要求の下位により分化した許可,勧誘,叙述の下位に報告,確認,対人の下位に挨拶等を位置づけた。本児の発話データを機能別に分類し,コミュニケーション機能の分化,拡大について検証する。

(3)話題 本児の発話データの内容を過去,現在,未来等の時間的側面と,社会,生活,自然等の領域的側面より分析する。

*宇都宮由美 第11回日本言語療法学会「難聴児の初期のコミュニケーションについて」


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コミュニケーション評価・訓練のフレームワーク

    佐竹恒夫(横浜市総合リハビリテーションセンター)

 私たちは従来から言語行動の3側面の1つとして『コミュニケーション』を言語発達遅滞児の臨床の基軸としている。このことは言語行動全体を俯瞰し,『コミュニケーション』を言語記号(記号形式−指示内容関係)や認知的な基盤(基礎的プロセス)との関連性の中で捉える必要があることを意味する。

 同時に私たちは個々の臨床技法を包括的訓練プログラムに位置づけて用いることが重要であると強調してきた*。今回取り上げた質問−応答関係やAACもその例に漏れないと考える。

 この演題では現時点での私たちのコミュニケーション評価・訓練の最新のフレームワークを提示したい。このセッションで原が言及する動的コミュニケーション・コミュニケーション機能・話題,「質問−応答関係検査セミナー」で示す新しい検査(質問−応答関係検査),「ワークショップAAC(Augmentative & Alternative Communication,補助・代替コミュニケーション)」で示される多様なAAC,これらの多角的にアプローチした臨床技法をフレームワークに位置づけ,2日目午後のシンポジウムでのディスカッションの話題提供としたい。

*:1994 言語発達遅滞訓練マニュアル<2>はじめに    佐竹恒夫 言語発達遅滞研究会/エスコアール


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