国リハ式<S−S法>言語発達遅滞検査法
 検査マニュアル はじめに

小寺富子

 言語発達遅滞児に対する臨床的アプローチは、各々の臨床家の言語観や理論的立場などにより様々である。しかし、いずれの立場をとるにせよ、治療の共通原則として、(1)言語環境を整備し、(2)関連要因の除去、軽減、補償をしながら、(3)遅れの症状(言語症状)そのものの改善を目指した直接的な働きかけが必要であろう。その際、耳鼻科、小児神経科、児童精神科、臨床心理、保育、教育、他の関連領域の専門家との連携が必要である。

 言語発達遅滞児の評価には生育歴(現病歴、既往歴、身体発達歴、検査歴等)、関連領域(小児神経科、臨床心理等)の専門家からの情報の他に、現在の発達全般の状態、言語症状の把握が必要である。

 従来、言語病理学他の多領域で言語評価・測定に関して種々の試みがなされてきたが臨床的に非常に重要な問題でありながら情報が最も不足しているのが次の2点である。すなわち、(1)言語記号を習得していないいわゆるlanguagelessの状態をどう評価するか,(2)検査結果をその後の言語発達促進にどう関連させるかである。

 そこで、日本音声言語医学会言語委員会言語発達遅滞小委員会の前身である旧言語発達遅滞検査法小委員会は、“languagelessをも対象にでき、かつ検査結果がその後の言語発達の促進とできるだけ関連するような検査法の作成”を目標に、1977年から検査法の検討を始め、1980年第一次試案として、<表1>のような言語発達段階を中心とした言語発達遅滞検査法<試案1>を発表した(小寺他1981)。

 本検査は、検査材料・手続等が定められているが、いわゆる標準検査standard testではなく、各症例への働きかけの手がかりを得るためのcriterion-reference testである。働きかけの出発点、方向、到達目標、方法を知るためには、個体間の比較のみでは不十分であり、個体内の諸行動間の比較が可能となる発達的課題から構成されている。実施に際しては柔軟な手続が用意されており、例えばある課題を子供が達成できない場合、検査条件を容易なレベルに下げたり、教示・介助等の訓練的介入を行い、達成できる条件(働きかけの出発点)を見つけようとする。

 以後、<試案1>を用いたパイロットスタディや言語発達遅滞児を中心とする臨床例への適用から、<試案1>が臨床的に有用であることが確かめられた(小寺他1983、 1984a、1984b)。また<試案1>を補充する資料や(小寺1985、1986)、評価と訓練プログラムとの関連づけに関する資料等も得られつつある(倉井他1984、1985a、1985b、1986、小寺他1984、1986)。

 一方、<試案1>には、normative dataが不備であったが、その後、一部の検査項目を1〜6歳の正常児に実施し、調査結果が得られている(小寺他1987)。

 これらの知見をふまえて<試案1>の検査項目の改訂増補を行い、言語発達遅滞検査法<試案2>として今回発表する。<試案2>では、検査結果を正常発達と対照できるようになったこと、言語習得以前の検査項目が増えたことが最も大きな改訂点である。



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